【麝香の配合意義】
●<麝香の話>・・命を養う上薬 渡邉武博士
「本草綱目」の中で、李時珍は麝香の配合意義について
「諸竅の不利なるを通じ、経絡の壅遏(ふさぎとめる)せるものを開くものだ。
…いかでこの物で引導をなして開き、通じてならぬということがあろうか。…」
と、記し、麝香の重要な効能の1つは、いろいろな生薬が、それぞれの薬効を十分発揮できるようにすることだと述べています。
つまり麝香の本領は、他の生薬の効き目をうまく引き出す役目をするというわけです。
現在、麝香を配合した製剤は、感應丸、敬震丹、三爽心、六神丸、救心、救命丸、奇應丸などの伝統薬に限られており、そのほとんどが家伝薬です。
大分類すると、生薬強心薬と小児五疳薬になります。
麝香は単味ではまず用いられません。
大抵は牛黄等、数種類の生薬とともに配合された製品となっています。
それらの生薬強心薬と小児五疳薬には、生薬の配合によって個性があり、
その方の証に合わせてお薬をお出しするのが、漢方薬屋の腕の見せ所ともいえます。
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【優れた救急薬としての麝香牛黄製剤】
●『平成薬証論』・・麝香 渡邉武博士
人間は、呼吸が絶え、心臓が止まったらおしまいです。
こうした生命の危機にも対応できる薬として、麝香の入る麝香牛黄圓や六神丸等があります。
こうした処方には呼吸器を守る辛味の薬(麝香など)と、心臓を守る苦味の薬(牛黄など)がともに配合されています。
ここぞという時に出て来る黄門様の印籠。
あの印籠の中身も多くは麝香牛黄製剤です。