『黄帝内経素問・四氣調神大論』から読み解く5月の養生

漢方・東洋医学

こんにちは、漢方俱楽部マツフジの松藤友紀です。

春は「のびやかに生きる」季節
5月に入り、自然界はすでに「春のピーク」から「初夏への移行期」に差し掛かっています。
それでも、東洋医学の古典である黄帝内経素問に記されている 春の養生原則 は、まさに今の時期にこそ実践的な価値を持ちます。

「春」黄帝内経素問・四氣調神大論
『黄帝内経』は中国最古級の医学典籍であり、東洋医学の理論体系の基礎を築いた書物です。現代人が春に感じる「なんとなくソワソワする」「新しいことを始めたくなる」という感覚は、二千年以上前に書かれた黄帝内経素問の四氣調神大論にも記されています。

とりわけ「四氣調神大論」における春のキーワードは一言でいえば 「発陳(はっちん)」
これは「内にこもっていたものを外へ開き、のびやかに発散させる」という意味があり、
自然界の草木が芽吹き、枝葉を広げるように、人の心身もまた 解放 へ向かうべき時期なのです。


情志(メンタル)の養生:抑えず、流す

春は五臓でいう「肝」に対応し、この肝は 気の流れ(疏泄)を司ります。したがって、ストレスや怒りを溜め込むと、気の巡りが滞りやすくなります。

ここで重要なのは、「怒らないこと」ではなく、怒りを適切に流すこと

専門的に言えば、これは「肝気鬱結」を防ぐアプローチです。

肝気鬱結(かんきうっけつ)
東洋医学でいう「肝」の働きである 気の巡り(疏泄機能)が滞った状態を指す。主な原因はストレスや感情の抑圧で、イライラ・気分の落ち込み・胸や脇の張り・ため息が増えるなどの症状として現れる。いわば「心身の流れが詰まっている状態」

具体的には:

  • 軽い散歩や趣味で 気の発散 を促す
  • 音楽や会話で情動を外へ出す
  • 深呼吸で横隔膜を動かし、気機を調整する

現代的に言い換えれば、「感情のデトックス」です。特に5月は環境変化によるストレス(いわゆる五月病)も出やすいため、この 流す 意識は非常に理にかなっています。


食養生:春は「苦味」と「血」を意識する

春の食養生には2つの軸があります。

① 春の苦味と香りで気を巡らせる」

セロリや春菊、蕗のような苦味野菜は、肝の働きを助けて気の巡りをスムーズにします。
これは単なる栄養ではなく、「気機調整」という機能的な意味を持っています。

② 補血で肝を支える」

肝は「血を蔵する」臓。春に活動量が増えると血の消耗も起こりやすい。

  • ほうれん草、小松菜 → 植物性の補血
  • レバー → 即効性のある補血
  • 棗・枸杞 → 穏やかに体を潤す

一方で、酸味(梅干し・酢など)は「収斂作用」があり、摂りすぎるとせっかくの発散を妨げます。
ここはバランスが重要です。

また、脂っこいもの・過度なアルコール・強い辛味は、肝に負担をかけ「熱」を生みやすい。
春は 軽やかさ が基本です。


起居(生活)の養生:リズムは「早寝早起き+ゆる運動」

古典には明確にこうあります。「夜臥早起

これは単なる生活指導ではなく、気血の循環リズムに基づいた原則です。

  • 夜:血は肝に帰り、回復する時間
  • 朝:陽気が立ち上がり、活動が始まる

つまり夜更かしは、回復システムを直接的に阻害します。

さらに見落とされがちなのが「目の使い過ぎ」。
東洋医学では「肝は目に開竅する」とされ、長時間のスマホやPCは肝血を消耗します。
特に寝る前の使用は、睡眠の質にも悪影響です。

推奨されるのは:

  • 軽いストレッチ
  • ゆるいウォーキング

激しい運動ではなく、巡らせる レベルが最適です。


春は「コントロールしすぎない」ことが養生

春の養生を一言で整理すると、

「抑えない・締めつけない・流れを止めない」

これは現代人にとってはやや逆説的です。私たちは日常的に「管理」「効率」「コントロール」を重視しがちですが、春に関してはむしろそれが不調の原因になり得る。

5月というこの時期は、春の のエネルギーをまだ活かせるラストタイミングです。

  • 感情はためずに外へ
  • 食事は軽やかに、血を補う
  • 生活は自然のリズムに合わせる

こうしたシンプルな調整が、結果的に自律神経やホルモンバランスの安定にもつながります。

専門的な理論は古代中国のものですが、実践してみると非常に現代的。
むしろ「ちゃんとしようとしすぎて、かえってしんどくなっている人」にこそ、試してほしいアプローチです。

 
漢方俱楽部マツフジ 松藤友紀

 

 

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