こんにちは、漢方俱楽部マツフジの松藤友紀です。
春は「のびやかに生きる」季節
5月に入り、自然界はすでに「春のピーク」から「初夏への移行期」に差し掛かっています。
それでも、東洋医学の古典である黄帝内経素問に記されている 春の養生原則 は、まさに今の時期にこそ実践的な価値を持ちます。

とりわけ「四氣調神大論」における春のキーワードは一言でいえば 「発陳(はっちん)」。
これは「内にこもっていたものを外へ開き、のびやかに発散させる」という意味があり、
自然界の草木が芽吹き、枝葉を広げるように、人の心身もまた 解放 へ向かうべき時期なのです。
情志(メンタル)の養生:抑えず、流す
春は五臓でいう「肝」に対応し、この肝は 気の流れ(疏泄)を司ります。したがって、ストレスや怒りを溜め込むと、気の巡りが滞りやすくなります。
ここで重要なのは、「怒らないこと」ではなく、怒りを適切に流すこと。
専門的に言えば、これは「肝気鬱結」を防ぐアプローチです。
肝気鬱結(かんきうっけつ)
東洋医学でいう「肝」の働きである 気の巡り(疏泄機能)が滞った状態を指す。主な原因はストレスや感情の抑圧で、イライラ・気分の落ち込み・胸や脇の張り・ため息が増えるなどの症状として現れる。いわば「心身の流れが詰まっている状態」
具体的には:
- 軽い散歩や趣味で 気の発散 を促す
- 音楽や会話で情動を外へ出す
- 深呼吸で横隔膜を動かし、気機を調整する
現代的に言い換えれば、「感情のデトックス」です。特に5月は環境変化によるストレス(いわゆる五月病)も出やすいため、この 流す 意識は非常に理にかなっています。
食養生:春は「苦味」と「血」を意識する
春の食養生には2つの軸があります。
① 春の苦味と香りで「気を巡らせる」
セロリや春菊、蕗のような苦味野菜は、肝の働きを助けて気の巡りをスムーズにします。
これは単なる栄養ではなく、「気機調整」という機能的な意味を持っています。
② 補血で「肝を支える」
肝は「血を蔵する」臓。春に活動量が増えると血の消耗も起こりやすい。
- ほうれん草、小松菜 → 植物性の補血
- レバー → 即効性のある補血
- 棗・枸杞 → 穏やかに体を潤す
一方で、酸味(梅干し・酢など)は「収斂作用」があり、摂りすぎるとせっかくの発散を妨げます。
ここはバランスが重要です。
また、脂っこいもの・過度なアルコール・強い辛味は、肝に負担をかけ「熱」を生みやすい。
春は 軽やかさ が基本です。
起居(生活)の養生:リズムは「早寝早起き+ゆる運動」
古典には明確にこうあります。「夜臥早起」
これは単なる生活指導ではなく、気血の循環リズムに基づいた原則です。
- 夜:血は肝に帰り、回復する時間
- 朝:陽気が立ち上がり、活動が始まる
つまり夜更かしは、回復システムを直接的に阻害します。
さらに見落とされがちなのが「目の使い過ぎ」。
東洋医学では「肝は目に開竅する」とされ、長時間のスマホやPCは肝血を消耗します。
特に寝る前の使用は、睡眠の質にも悪影響です。
推奨されるのは:
- 軽いストレッチ
- ゆるいウォーキング
激しい運動ではなく、巡らせる レベルが最適です。
春は「コントロールしすぎない」ことが養生
春の養生を一言で整理すると、
「抑えない・締めつけない・流れを止めない」
これは現代人にとってはやや逆説的です。私たちは日常的に「管理」「効率」「コントロール」を重視しがちですが、春に関してはむしろそれが不調の原因になり得る。
5月というこの時期は、春の 発 のエネルギーをまだ活かせるラストタイミングです。
- 感情はためずに外へ
- 食事は軽やかに、血を補う
- 生活は自然のリズムに合わせる
こうしたシンプルな調整が、結果的に自律神経やホルモンバランスの安定にもつながります。
専門的な理論は古代中国のものですが、実践してみると非常に現代的。
むしろ「ちゃんとしようとしすぎて、かえってしんどくなっている人」にこそ、試してほしいアプローチです。
漢方俱楽部マツフジ 松藤友紀
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