オリボーレン(Oliebollen)

オランダ生活

こんにちは、漢方俱楽部マツフジの松藤友紀です。

オリボーレンというお菓子をご存じですか?
オリボーレン(Oliebollen)は、オランダの冬に欠かせない伝統的なお菓子です。

直訳すると「油のボール(油団子)」という意味。
Oliebollen(オリボーレン)は複数形で、単数形だとOliebol(オリボール)になります。
小さめのこぶし大のまん丸い形で、小麦粉・卵・牛乳・イーストを混ぜた生地に、スパイスや干しブドウなどを加えて油で揚げたもの。
外はカリッと中はふんわりとした食感が特徴で、粉砂糖をたっぷり振りかけて食べるのが定番です。

このオリボーレンが姿を見せるのは、毎年10月1日ごろから。
オランダ各地の街角や広場に「オリボーレンクラーム(oliebollenkraam)」と呼ばれる屋台が立ち並び、シーズンのはじまりを告げます。

秋から年末にかけて、街角の屋台に立ち寄ってオリボーレンを楽しみ、そして大晦日には家族や友人と集まってスパークリングワインと一緒に食べるのがオランダの定番です。

 
このオリボーレンには、キリスト教が広まる以前のヨーロッパに根ざした、古い冬の信仰が関係していると言われています。その中心にいたのが、冬の女神ペルヒタ(Perchta)。

ペルヒタはドイツ語圏やオランダの一部で信仰されていた存在で、冬の終わりに現れ、人々の善悪を見極める女神とされていました。
人々はこの時期、女神の怒りを鎮めるために油で揚げた菓子や食べ物を供える習慣を持っていたと伝えられています。

怒れるペルヒタは、悪い者を刃で切り裂く恐ろしい存在でしたが、人々はその怒りから逃れるために油で揚げたオリボーレンを食べて身を守ったといわれています。

女神が人々を襲おうとしても、腹の中が油で満たされているため刃が滑って傷つけられなかった(!?)

そんな伝説から、オリボーレンは女神の怒りを鎮める“守りの食べ物”ともされているそうです。

ちなみに、このペルヒタさん、ドイツではとても恐ろしい顔をしていることで有名です。
特に南ドイツでは、子どもたちを怖がらせる「年老いた魔女」のような姿で描かれることもあり、
地域によっては今でも「悪い子のところにペルヒタが来る」と言い伝えられています。

 

オリボーレンの原型は、少なくとも中世のオランダ(15世紀ごろ)には存在していたとされています。
当時は「oliekoecken(油のケーキ)」と呼ばれ、祝祭や宗教行事の際に食べられていました。
油は高価で貴重だったため、オリボーレンは「特別な日だけの贅沢な食べ物」でした。

17世紀の絵画にも、すでにオリボーレンの姿が見られます。
有名なのは、17世紀オランダの画家アブラハム・ハンニーマン(Aelbert Cuyp)の弟子とされる作家が描いた「Meid met oliebollen(オリボーレンを持つ娘)」という作品。
冬の屋内で粉砂糖をかけた丸いお菓子を大切そうに持つ女性が描かれています。

18〜19世紀に入ると、家庭で作られるようになり、やがて街の屋台文化とともに広まっていきました。現在のように「屋台が登場する」という形が定着したのは、20世紀中頃のこと。

 

スパイスやオレンジピールなどが入っていて意外とお酒ともいけるお味です!

私がオランダに来た2019年頃は1つ1€だったのが、今では1つ1.5€。
物価が着実に上がっていますね。世知辛い。

最近では日本でも売られていることがあるそうですが、 
秋から冬にオランダを訪れたら、ぜひ街角のオリボーレンクラームを覗いてみてください。

 

―― 漢方俱楽部マツフジ 松藤友紀

 

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